~こんにちは、Kazです。
今回は新企画「横浜薬科大学・研究室訪問!」ということで研究室を訪問しインタビューを行ってきました!
第一回目として、漢方薬学科・天然物化学研究室を取材しました。
インタビューに対応してくださったのは梶原康宏先生です。
初めてのインタビューで至らないところが多々あるとは思いますが、是非先生からの熱いメッセージを受け取ってください!!~
Kaz)こんにちは、漢方薬学科三年のKazと申します。
今回は宜しくおねがいします!
―天然物化学研究室の梶原康宏です。
よろしくお願いします。
Kaz)まず始めに質問なのですが、研究室の名前「天然物化学」というのは具体的にどのようなことに関する学問なのでしょうか?
―「天然物化学」とは"天然物"つまり自然界が産みだす"天然"の有機化合物について考える学問です。特に薬学においては、新しい医薬品を創るために、例えば薬用植物の成分研究、構造解析そしてその生物活性を調べ、その有効性について考えるという学問ですね。
それから天然物の全合成、つまり"天然物を人の手で合成する"ことも「天然物化学」の範囲に入ります。
Kaz)なぜ、自然から取れるものをわざわざ合成する必要があるのでしょうか?
―例えば、イチイの木からは「タキソール」(別名:パクリタキセル)と呼ばれる化合物を微量に得ることができます。現在、タキソールは抗がん剤として利用されている医薬品です。しかしタキソールは微量成分なので、イチイの木から抽出して医薬品に用いたのでは、大きな環境破壊につながります。そこで、人の手でタキソールを合成することが必要になったわけです。

Kaz)なるほど、植物の知恵を借りながら地球環境にやさしい医薬品をうまく開発するということなんですね。
Kaz)ところで先生はどのような研究をなされてきたのでしょうか?
―大学院博士課程では天然物の全合成の研究をやっていました。具体的にはカリブ海産のある種の海綿からdysidiolide(ダイシジオライド)という化合物が得られるのですが、これの全合成を行いました。
このdysidiolideは、細胞周期に関与するある特定のプロテインホスファーターゼを選択的に阻害する化合物として発見されました。これ以前までは、この酵素の選択的阻害剤は見出されておらず、dysidiolideは、がん細胞の細胞周期をG1期でストップさせる全く新しい作用機序を持つ抗がん剤となる可能性があると報告されたわけです。
そこで、僕の所属していた研究室を含め、世界の色々な研究グループがその全合成を行いました。
天然物の全合成の研究は、複雑な構造をした化合物を誰が最も早く合成するか、そして、如何に立体選択的に効率良く合成することができるか、色々なグループが競争し合うわけです。
そして、その研究の過程で新しい反応が開発されたり、その化合物の誘導体が合成できるようになり、より良い医薬品へと発展したりすることが良くあります。
実際に我々が使っている医薬品はそのルーツを辿るとかなり多くのものが天然物を基にしているのです。
Kaz)このdysidiolideの化学構造式をみると、とても複雑に思えますが・・・

―確かに紆余曲折はありましたが、僕らのグループは、最初の出発物質から数えて全部で27工程の反応を経て、最も高い全収率でdysidiolideを合成することができました。
全合成で重要となるのは、「鍵」となる反応で、どのように母核を立体選択的に構築するか、という合成戦略が問われます。次に実際に実験しながら、より良い収率を模索して条件検討していきます。
全合成の研究は山登りに良く例えられるのですが、どうしても上手くいかない時には、迂回ルートを探して登らなければいけません。また途中で原料供給がなくならないように「石橋をたたいて渡る」ような慎重さが求められます。
Kaz)とても大変な作業なのですね。
―そうですね。ただその分、NMRのチャートで全合成できたと分かったときは、格別の喜びがありますよ。この研究成果が一つの自信にもなって、次はアメリカに留学してみたい、という気持ちになりました。
アメリカでは5年半の間、ビタミンB12の生合成の研究をしていたのですが、これも面白かったですね。

これを話すと長くなるので、またの機会にしますが、生命の進化がどのようにして起きてきたのか、という壮大な謎解きに挑戦する面白さ、そして生命の力の凄さを改めて感じることができました。
研究の世界は自分のアイディアと腕を試せるので、これは本当に"やりがい"があって、面白いですね。
Kaz)世界を相手に競争、一番を目指す。そのモチベーションはとても勉強になります。薬学部に在籍する学生に向けて伝えたいメッセージがあれば是非おねがいします!
―みなさんの多くは、将来、薬剤師になることを目標にしていると思います。ですが、単に"薬剤師"になることを目標にして、満足してはいけないと思います。自分が面白いと思うことに対して、どんどん自分から進んで得意分野を作ってください。
例えば英語やパソコンのスキル、あるいは有機化学や天然物化学の知識を使って問題解決できる能力などを身につけておくことが大切です。
Kaz)なるほど、学生としてはつい国家試験に合格すればいいと安易に考えがちですが、それでは十分ではないということですね。
では最後に、これから薬科大学、とくに横浜薬科大学の受験を考えているみなさんに向けてメッセージがあればよろしくおねがいします。
―ハマヤクの良いところの一つは、一年生でも二年生でも、研究室に入ってきて教員と気軽に話をすることができるところですよね。当研究室も例外ではなく、誰でも質問、相談、遠慮なく話をしに来てもらって結構です。研究だけではなく教育にも熱心な教員が沢山いると思っていただいていいですね(笑)。
受験生のみなさんに向けて僕が伝えたいことは、「自分が興味を持ったことに対して"知りたい"という情熱を持って、積極的に調べてみる」ということです。
なぜ人は病気になるのか、どうして薬で治せるのか、それはどのようなメカニズムなのか、その分子のどの化学構造が重要なのか、新しい薬を創るためにはどうすれば良いのか、など色々なことに興味を持てば、きっと薬学が面白くなるはずです。
そして世の中から実力を認められる、知識と人間性を兼ね備えた薬剤師や研究者になって欲しいと思います。みなさん、一人一人を応援していますので、是非、"やればできる"と信じて頑張ってください。
Kaz)熱いメッセージをありがとうございます!
<終>
今回はこの研究室訪問インタビューを通して漢方薬学科・天然物化学研究室について基本的なことを理解することができました。また、学生記者として、一薬学生として先生のお話しは非常に参考になりました。
梶原先生、今回は私のつたないインタビューに快く応じてくださいましてどうもありがとうございました。
2010.12.3(土) Kaz